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シリーズその④ 「PMI体験記」第1話「PMIとは」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

まず第1話は、概論として「PMIとは」についてお伝えしたいと思います。


PMIとは

PMIは、Post Merger Integrationの略称で、日本語に直訳すると「買収後経営統合」のことです。M&Aを行った場合、それまでアカの他人同然だった会社同士が同じグループになるわけですから、経営管理も日々のオペレーションも社風も、全く異なっていて当たり前です。ですがそれを放置すると、業務の不効率、連係ミスによる不利益、経営管理の複雑化、社員の分断など、さまざまな不具合を起こす原因となります。

そもそもM&Aは、規模の拡大、技術力の向上、人材の充実など、企業を買収することによって前向きの効果を期待するものです。買収段階ではシナジー効果なども見込んで、1+1=3ぐらいの期待を抱くことが多いですが、現実はそんなに甘くありません。運動会のムカデ競争のように、グループに突然新メンバーが加わって、全く息が合わなくてバタバタ転んでいるのと同じで、1+1が1.5とか1.2になってしまうこともM&Aにおいては良くある話です。

大型のM&Aによく見られるのが、「対等合併」や「対等の精神による合併」です。この場合、両社の上に持株会社を置いて、従来の2社を子会社としてぶら下げるなど、形の上でも対等にすることが多いです。これは、M&A後にどちらの会社が上とか下とかいった争いをなくし、両社の社員が気持ちよく共通の目標を目指せるようにと配慮した、日本で多く見られる形態です。このような対等合併であってもPMIは必要になりますが、大型合併の場合は当初最低限の統合だけ行い、しばらくは子会社の個別ルールで運営しながら、その後数年かけてじっくりと経営を統合することが多いです。以下では、一般的な中小企業の親子会社関係のPMIを想定して解説します。

このようにPMIとは、買収した会社がグループ内で一体化し、買収効果を少しでも早くもたらすための統合プロセスなのです。 このPMIは、経営統合、業務統合、意識統合の3段階で実施されます。

PMIで最も大事なこと

PMIで最も大切なことは何でしょうか?それは何と言っても、「子会社(社員)とのコミュニケーション」です。他人の下風に立つというのは、誰もいい気分がしません。それまでは独立した会社で、誰にも気を使わなかったのに、急に親会社ができてその社員がいきなり乗り込んで偉そうなことを言ったら、腹が立ったり卑屈になったり距離を置いたり、とにかくロクな人間関係になるはずがないです。

私は、人間の価値はその人の人格と能力によって決まると思っていますので、肩書きはただの参考情報程度にしか考えていません。ですが世の中の結構な多数は、この肩書きが人間の優劣だと勘違いしているようです。子会社に対してPMIを行う場合は、そこの社員に対するリスペクトを決して失ってはいけません。ただでさえ急に親会社が出現して面食らっているところに、今まで慣れ親しんだルールやシステムや帳票書類や名刺まで変わってしまうのですから、そのストレスは相当なものです。

前章で対等合併について解説しましたが、何でわざわざ「対等の精神」とまで強調するのかと言えば、グループ内で変な上下関係を作りたくないからです。読者の皆さんが、もしPMIを担当することになった時は、この点について最も気を使ってください。「すみません、ウチの会社(親会社)の制度も至らない点が多いんですけれども、どうしても統合しなければならないので、ちょっと我慢してください」ぐらいにへりくだって、ちょうどいいぐらいです。

経営統合

経営統合とは、買収された会社の経営管理システムを、親会社の仕組みに統合することをいいます。異なる会社が統合するためには、両社の経営理念・ビジョンに立ち戻って、どのように統合するか検討するところが出発点となります。その上で、経営戦略、役員人事、ガバナンス、予算配分などを決定し、統合していきます。M&Aでグループ会社が1社増えたからと言って、経営理念やビジョンを見直すかどうかは状況によります。ですが、親会社と全く同業の子会社であれば別ですが、何か新しい事業や技術を持つ子会社であれば、それを踏まえてグループ全体の経営理念やビジョンを見直してもいいのではないでしょうか。その方が、グループ参加する子会社の社員にとっては迎え入れられたという印象を強く持ちます。

業務統合

業務統合とは、買収された会社の業務の流れやルールを、親会社の仕組みに統合することをいいます。まずは組織の全体的な構成を変更し、部署や拠点のあり方を見直します。拠点は親会社の拠点と統廃合することもありますが、人事異動や退職が絡むので、急がず計画的に実施しましょう。次に、規程や実施要領などのルールを変更します。そして、変更後の業務プロセスが固まったら、関係者とすり合わせを行い、業務上の支障がないか再確認します。ここまで済んだ後に、人事の見直し、ITシステムの統合、会計処理の統合などを実施することになります。

意識統合

意識統合とは、買収された会社の社員の意識と、親会社の社員の意識を統合することです。冒頭にもご説明しましたが、そもそもついこの間までアカの他人同士だったのですから、両社の社員の信頼関係の構築は必要不可欠となります。

M&Aでは一般的に、混乱を防ぐために、上層部の最低限の関係者にしか事実が伝えられません。なので一般の社員がM&Aを知るのは実施直前か、場合によると実施後になります。急に親会社が出現した子会社の社員はもちろんのこと、業務内容や取引関係が変わることになる親会社の社員にとっても、精神的業務的負担は大きいものです。それでも、日常業務はストップすることなく動かなければならないのですから、社員には早く現実を受け入れて、自分たちのなすべき業務に邁進してもらわなければなりません。PMIでは、社員の意識をいかに早く引き上げるかが、重要なミッションとなります。

M&Aの理念

先ほど、「PMIで最も大事なこと」の章で、子会社とのコミュニケーションが最も重要だとお伝えしましたが、これはPMIの実務の中で捉えた時の話です。M&A全体を通して最も大切なことは、「M&Aの理念」であることを補足しておきます。

M&Aは、ある意味やってみないと分からないギャンブル的な要素があり、狙いがハマると大きなリターンをもたらす一方、逆に失敗すると多額の資金をドブに捨てることになります。この失敗のリスクを少しでも減らす要素が、「M&Aの理念」です。

PMIにおいては、経営統合、業務統合、意識統合を実施すると解説しました。ですが統合の実務における判断は多岐に渡り、どう決めていいのか分からないことがよくあります。その時に必要なのが、「M&Aの理念」です。

理念さえしっかり共有できていれば、判断に迷った時に社員は原則に立ち戻ることができます。私が監査法人にいた時に、ブティックで洋服でも買うようにM&Aをしていた経営者がいました。当然ですがそこに理念はなく、社員も単なる買い物程度にしか思っていなかったので、やはりPMIは甘かったというか、単に子会社をくっつけただけになっていました。そうなるとシナジー効果は期待できず、リスクを冒した割に見返りは少ないということになります。せっかく高い買い物をするのですから、きちんと魂を込めて、いい買い物になって欲しいものです。


 
 
 

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