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シリーズその④ 「PMI体験記」第11話「スキルマップ改訂 その②」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

本日は第11話ですが、ポストPMIの第1弾として、「スキルマップ改訂 その②」について解説します。


改訂のポイント

以前にも説明しましたが、当時S社には、すでにスキルマップがありました。ですがそのスキルマップは、新しい修理技術に対するアップデートができておらず、技術指導のツールとして使ってはいたものの、中途半端な使い方に終わっていました。つまり中途半端にしか使えていなかったために、スキルマップと人事評価の関係があいまいになっており、社員にしてみればスキルを磨けば自分の昇給や昇格にどうつながるのか、明確な目標意識が持てませんでした。

また、S社の修理作業の価格は、モーターのサイズと作業内容によって決まっていましたが、その計算の根底には、過去の経験に基づく標準的な修理作業時間がありました。社員全体のスキルが上がれば、この標準時間がもっと短くなり、修理作業の採算性が上がると同時に、より多くのモーター台数を受注できることになります。このように、S社のスキルマップは、経営上の重要部分に深くかかわっていたのです。

スキルマップ改訂の手順

スキルマップの見直しは、各リーダーが分担して行いました。分解/組立、巻線、機械加工、社外作業など、工程別にリーダーがいて、その人たちが技術的に最も熟練していましたので、約300弱の評価項目を工程別に分けて、各リーダーに見直してもらいました。

見直しは、まず作業項目の追加と削除から始めました。モーターの基本的な構造は昔も今も変わりませんが、細かい部品や機能の追加により、作業項目を追加しなければならないことがあります。また、型式があまりに古すぎて、修理に出てこなくなったモーターに関連する作業項目は、技術として覚えても仕方がないので削除します。

次に、作業項目ごとにレベル分けを設定します。レベルは5段階に分けて、例えば

レベル① 上長の作業補助ができる

レベル② 上長の補助を受けて自分でできる

レベル③ 1人で作業ができる

レベル④ 熟練者として認定する

レベル⑤ 指導者として認定する

このように分類します。レベル①やレベル②は、1人ではできないレベルなので話になりません。最低でもレベル③に到達するよう、指導を強化します。1人で作業できるレベル③になったとしても、見積り段階で想定した標準作業時間を大幅に超えるようであれば、工程全体が遅れて納期に間に合いません。レベル④まで到達すれば、誰も頼りにすることなく会社の期待よりも早く作業を終えられる腕前になるのです。

次に、旧スキルマップで評価されていた各社員を、新スキルマップで新たに評価し直します。これはレベル①=1点からレベル⑤=5点まで点数化し、個人別にすべての技術を集計します。そうすると、入社してから5年も経つのにこの社員の総点数は低すぎるとか、巻線工程に10年もいるのにまだ直流モーターのコイル交換ができないとか、技術的な課題が浮かび上がります。

ここまで手順が進めば、次は各社員との面談です。入社年数の割に総点数が低くないか、会社としてもっと磨いて欲しい個別技術は何か、社員本人がこの先磨きたい技術は何か、次回面談までにどんな技術の習得に努めて、総点数は何点を目指すのか、などについて社員と話し合います。そして、スキルマップによる技術習得が人事評価や給与査定にどのように反映されるのか、これについても上長からきちんと伝えます。

スキルマップ改訂の効果

スキルマップによる運用が活性化すると、さまざまな効果が出てきます。

まず1点目は、会社としての技術力が可視化されます。S社はテクノロジーファーストの会社なので、これはとても重要です。各社員の総点数を全社合計することで、会社の技術力が総点数として把握できます。

ただし、これを単純に増やせばいいという訳ではなく、足りない技術はないのかを分析する必要があります。つまり、ボトルネックになる工程がないのかを確かめるのです。例えば巻線工程の作業がひっ迫して、次の受注をお断りするような事態が多発していたら、巻線加工の技術者を増やすとか、既存の技術者のレベルをもっと上げるとか、対応策を考える必要があります。逆に、昨年よりも総点数が大きくアップしていても、誰でもできる分解/組立工程の点数が増えているだけなら、会社としての技術力がアップしたとはあまり言えないでしょう。このように、会社に必要な技術が揃っているのか、揃っていないのであれば誰がいつまでにその技術を習得するのか、そういった技術戦略を立てることができるようになります。

2点目ですが、会社と社員がコミュニケーションする時の「共通のモノサシ」となります。スキルマップをもとに面談をすれば、「社員がどうやったらやる気を出してくれるのか」、「会社は自分のことをきちんと評価してくれているのか」などといった疑心暗鬼に陥ることもなくなります。会社からは、「君がA-135番とB-167番の技術を磨いてくれたら、会社はもっと大きな案件を狙いに行けるので、その期待に応えるよう頑張って欲しい」と言えば明確ですし、また社員からは、「私は次のリーダーになりたいので、Cの技術はすべてレベル④以上まで磨きます」という個人別目標管理にも使えます。このように、会社からの期待を具体的に社員に伝えて、その成果をもとに社員を正当に評価すれば、会社に対する社員の貢献意欲を引き出すことができるのです。

次に3点目ですが、受注管理と採算管理への活用が可能となります。

まずは受注管理ですが、現在の社員数と技術力から換算して、モーターを月間100台修理できる体制が整っていたとします(目標台数も100台)。既に80台分の受注が決まっているとすれば、追加で受注できる台数は20台ですが、そこに40台の依頼が来たとします。この場合、残業や休日対応してくれる社員がいれば40台の受注は可能なので、会社は社員に協力を打診して40台の注文を取りに行きますが、納期に自信がなければ断ります。このように、正確な受注可能台数が把握できていれば、社員とうまく協力して月間120台(目標+20%)の受注ができますが、これが不正確だと納期遅れが怖くて受注できず、結局月間80台(目標-20%)にとどまってしまいます。生産能力に限界がある会社の受注管理は、業績に多大な影響を及ぼすのでとても重要です。

次に採算管理ですが、すでにご説明した通り、モーターの修理見積は標準作業時間と標準加工賃の掛け算で算出されます。ここに実際作業時間と比較して分析することで、採算管理が可能となるのです。実際作業時間が標準作業時間に比べて多い場合、技術力をもっと上げる必要があるのか、それとも標準作業時間の設定が厳しすぎるのか、であれば修理代を値上げすべきなのか、色んな検討が可能となります。そして、作業時間に比べて高い修理代を請求できる修理項目が、会社にとって採算的に有利な修理案件となりますので、そのような修理項目が含まれる案件を営業は取ってくればいいのです。さらに言うと、この採算管理を徹底することで技術力が向上して、標準作業時間の短縮につながることもあります。そうなれば、月間の修理可能台数が増えることになり、受注管理に好循環をもたらすことになるのです。


このように、テクノロジーファーストの会社にとって、スキルマップはものすごく重要な経営ツールとなります。例えるなら、スキルマップという脊髄が1本通っているところから、技術管理、人事管理、人材育成、受注管理、採算管理という重要事項に神経伝達しているイメージが、ちょうど合っているのではないでしょうか。




 
 
 

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