シリーズその④ 「PMI体験記」第4話「個別面談」
- ritsu_dragon

- 2024年7月31日
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読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。
シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。
シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。
そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。
本日は第4話として、PMIの最初に行った「個別面談」の内容と結果をお伝えします。
面談の狙い
私が行った面談には、3つの狙いがありました。
まず1点目は、社員の不安を取り除くことです。M&Aが終わって間もない時期は、被買収企業の社員は多くの不安を抱えています。給与や賞与に変化はあるのか、勤務時間や休暇などの待遇に変化はあるのか、会社の業務が大幅に変わったりしないか、人事異動や配置換えなどで現場が混乱しないかなど、数え上げればきりがありません。私は事前段階で、S社の規程やルールがしっかり整っていることを把握していましたので、急激な制度変更や配置換えはないことを1人1人に説明しました。その上で、社員との面談を通じて改善点が出てくれば、その都度変更することを約束しました。
2点目は、会社(公)と個人(私)の両者を意識づけることです。これはこれまでに何度も解説しましたが、私の信条である「公」と「私」の区別に基づいています。一般的に、面談によって得られる社員からの情報は、主体が分からないことが多いのです。恐らく、話している本人もあいまいなのでしょう。ですが、会社における面談で大切なのは、まずその社員がこの会社で個人の幸福を得られているかの確認です。会社の処遇に満足しているか、不満な部分があるならどこなのか、その不満はすぐに解決できるのか、それとも本人の努力が足りないのか、そういった要素を解きほぐす必要があります。そして、その社員がこの会社で幸福を得られている、または得られる見込みがあると確認してから、初めて「ではあなたは会社にどんな貢献をしてくれるのですか?」という質問をぶつけます。これはごく当たり前の理屈なんですが、意識できている社員は意外にもまれにしかいません。
社員に幸福を与える見込みさえないなら、会社が社員に貢献を要求してはいけません。もちろん会社は魔法使いではありませんので、限界はあります。社員が高い幸福を求めるなら、反対に会社は社員に対して高い貢献を求めることになります。このように、会社と個人を区別して、自分が幸せになるためには会社に対する相応の貢献が必要なんだと理解してもらうこと、社員に対する「公」と「私」の意識づけが、その後の会社運営にとって非常に重要です。
3点目は、会社の課題を聞くことです。例えば全社員を一堂に集めて、「さあ自由に意見を言ってくれ」といってもいい情報は集まりません。前稿の事前準備で解説したように、社員を集めて私の考え方や方針を伝えて、方向性をまとめる全体ミーティングは必要ですが、実際の聞き取りは個別面談でないと本音が出てこないのです。面談にこぎつけるまでに、「この人には会社の内情を伝えてもいいんだ」「これだと会社が良くなりそうだ」という気持ちにしてから、個別面談でじっくりと聞いてあげると、会社の課題がボロボロと出てくるのです。
面談のポイント
私が面談で社員に問いかけた話題は、以下の通りです。
・S社がP社の傘下に入って、不安や疑問に思っていることはありますか?
・いま会社でどんな役割を負っていますか?
・その役割を果たすにあたって、不自由や不合理や疑問はないですか?
・給与、賞与、勤務時間、休暇など、待遇に不満や意見はありますか?
・仕事と家庭を両立できていますか?(プライベートは差し支えないは範囲で)
・この先、会社における目標は何ですか?(報酬面、役職面、技術面)
・あなたの目から見て、この会社の課題は何ですか?
・この会社を良くするために、あなたからの提案はありますか?
実際は個人個人で話の内容が大きく異なるので、全員に対してこれらの質問を網羅的に行った訳ではありませんが、聞くべきポイントはおおむね上記の通りです。ある質問をしている時に、別の方向に話が脱線することもありますが、それもさえぎらずに最後まで聞いてあげます。そうすると、意図していなかった意外な方向から課題が見えてくることがあるのです。また、他の社員の中傷や告げ口を聞くこともありますが、その言い分を一方的に聞くのではなく、1つの意見として受け止めるようにします。誹謗中傷自体はよろしくありませんが、そこに隠れている会社の課題に対しては向き合う必要があるからです。さらに、とんでもない意見を言い出す社員もいますが、それも否定しないことが大事です。否定してしまうと、次から有益な意見も出て来なくなります。中には、何を聞いても全然意見が出てこない、口の重たい社員もいます。こういう人には、少しでもしゃべりやすい環境を整えてあげることと、じっくり時間をかけて意見を引き出してあげることが大切です。実際、私が行った個別面談は、何だかんだと理由をつけてだいたい3か月に1回ぐらいのペースでしたので、そのうちに意見を言うようになってくれました。
このようにして、PMIにとって重要な社内意識の統一と、その後の統合作業に必要な重要課題の収集ができました。次稿では、個別面談によって得られた検出事項について解説します。
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