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シリーズその④ 「PMI体験記」第13話「マーケティング導入 その②」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

本日は第13話ですが、ポストPMIの第2弾として、「マーケティング導入 その②」について解説します。


マーケティング導入の手順

マーケティング導入の担当者が決まったところで、組織変更と人事異動の発令を行いました。取締役Aさんを製造部から外して、マーケティング担当という部下なしの役職にしたのです。

社内では、パワハラの元凶だったAさんが製造部から外れて部下なしになったので、この人事は好意的に受け取られていました。またAさん本人も、自分の過去の間違いを挽回するには時間がかかることを理解していましたので、製造部から外されたことに納得していました。その上で、新たな会社の武器となるマーケティング手法を身につけることに対して、非常に意欲的でした。

まず初めに、潜在顧客のリスト化を行いました。名簿屋さんみたいな業者からリストを買うのも選択肢としてあったのですが、かなりコストが高いことと、そのリストが本当にモーター修理の潜在顧客であるかどうかの確認が取れないことから、費用対効果の面で採用せず、ネットなどで公表されている情報から地道に作成しました。

製造ラインを有している製造業が潜在顧客になるので、S社の近隣である関東周辺の工業団地を探して、そこで製造ラインを使って操業していそうな会社をリスト化するところから始めました。自治体のホームページやネット地図から工業団地を探し、その団地に入居している会社のリストを入手し、会社名やホームページから業務内容を推測して、製造ラインがありそうな会社をリスト化する、という作業です。地道な作業ではありましたが、あまり時間もかからずに関東周辺の潜在顧客リストは出来上がりました。日本には結構な数の製造業があるんだと、あらためて実感しました。

次に、このリストを元に潜在顧客にアプローチするのですが、通信手段としてはまずダイレクトメール(DM)を採用しました。理由は簡単で、コストが安い(封書の切手代)ことと、反応を確認するもっとも簡単な手段だからです。DM用の透明な封書を買ってきて、これに会社紹介のチラシを入れました。中身も開けずに捨てられないように、「モーター修理」「相談無料」などの重要ワードはすぐに見えるように工夫しました。そして、だいたい200~300通ぐらいの単位で5回ぐらい発送してみました。

反応があったのは、だいたい発送数に対して0.5%ぐらいだったと記憶しています。これが0%だったら、我々の挑戦は暗礁に乗り上げていたでしょう。しかし低確率とはいえ、反応があったということはやり方が間違っていなかったことを意味します。あとは、反応率を上げる工夫をするだけです。

結果の検証とアプローチ手法の変更

反応率を上げるためには、反応しない原因を探す必要があります。

①そもそも、このアプローチ(工業団地リスト化)が間違っているのか?

 ⇒いずれもっといい方法が見つかるかもしれないが、今はその時期ではない

②整備すべきモーターを持っていない会社なのか?

 ⇒ネットの情報をもとにした推測に過ぎないので、これは仕方がない

③モーターは持っているが、他に修理業者がいるので不要なのか?

 ⇒今は必要ないかもしれないが、将来的にS社の顧客になる可能性はある

④モーターは持っているが、修理の担当者にチラシが渡されず廃棄されたか?

 ⇒だとしたら、ここは改善の余地がある

上記のうち、①②については調査方法がまだ手探りであったため、この時期に考えても仕方のないことです。会社としての知見が蓄積されて、もっといい方法が見つかってから変更すればいい話です。③については、高齢化により同業他社が廃業するケースも多いので、次世代の顧客として把握しておきたいです。ただし、DMでは③の顧客層を発見することはできないので、別の方法で検証する必要があります。

④については、当初から想定はしていました。感覚的に潜在顧客はもっと多いと考えていたので、反応率0.5%はもっと上がるはずであり、顧客へのアプローチ方法を改善知れば解決するという仮説を立てました。また反応率が低いと、単純に費用対効果が低いので、コスト面でも改善が必要でした。

そこで、DMではなく電話営業(テレアポ)を採用することにしました。その理由は明らかで、DMであればチラシを捨てられて終わり、という可能性が高いですが(④のリスク)、テレアポであればアポインターの腕次第で、モーター整備の担当者までたどり着く可能性が上がるからです。また、電話で事情を聞くことができれば、上記③のような会社は別途リスト化して、将来顧客として把握することもできます。

早速、テレフォンアポインターの募集を始めました。ここで人件費をケチってはだめで、テレアポはやはり専門の訓練を受けた人に任せるのが一番です。たまたまですが、会社の近隣で子育て中のアポインターの方がいて、その人にパートで来てもらうことになりました。

次に、アポインターの方と一緒に、「コールスクリプト」を作成しました。コールスクリプトとは、テレアポで使う想定問答集です。まず電話をかけて、総合案内につながって、用件を端的に伝えて、該当部署につないでもらって、モーターに関する課題を引き出して、修理の専門家であるAさんにつなぐ、という流れを問答集としてまとめるのです。これはメインの流れですが、うまく該当部署につながらなかったり、顧客が専門的な質問をしたり、Aさんが横にいなくて後日折り返しの必要があったりなど、いろんなパターンの受け答えを想定して作成します。そこまで準備して、あとはアポインターの方にひたすら電話してもらいます。

マーケティング導入の成果

アポインターの腕が良かったおかげだと思いますが、結果は顕著に現れました。すぐに商談につながりそうな反応が1%以上あり、何度か相談に対応しているうちに商談に至ったものを含めれば、1.5%ぐらいには到達していたと思います。また、上記③のような潜在顧客も把握できました。相談や商談はすべてAさんが対応し、彼のモーターに関する高い知識と説明の的確さで、顧客は瞬く間に増加しました。

マーケティング導入後半年で、新規受注は3000万円を突破しました。また、受注には至っていないが継続的に商談している案件が6000万円もあり、これも金額やスケジュールが合意したものから新規の受注となりました。当時のS社の売上高が2.5億ぐらいでしたので、この伸びは破格だったと思います。

またうれしい誤算として、テレアポでつながった顧客から新たな紹介をうけるケースもありました。モーター修理業が見つからないという、同じ悩みを抱えた近隣の会社を紹介いただき、芋づる式に顧客が増えたという事例もあります。

このマーケティング導入で学んだことは、残存者利得を狙える「枯れた業界」には、まだまだ可能性があるということです。いわゆるオールドエコノミーに属する業界であっても、工夫次第でまだ伸びる余地があることをお伝えしたくて、このマーケティング導入の事例をご紹介しました。


 
 
 

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