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シリーズその④ 「PMI体験記」第15話「DX導入準備 その②」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

本日は第15話ですが、ポストPMIの第3弾として、「DX導入準備 その②」について解説します。

DX導入の手順

まずはリーダークラスを集めて、私が想定する情報の流れが間違っていないか、実務で困ることはないかを確認しました。ホワイトボードに図を描いて、顧客との商談がスタートするところから、アサインメント(割当て)⇒モーター受入れ⇒分解・点検⇒見積り⇒契約⇒整備作業⇒能力テスト⇒納品・据付という一巡の流れで、どんな情報が発生してどう流れていくかをたどって行きました。ここでアサインメントとは、工場スペース、設備、作業員などを割当てることを指します。整備工場に余力がなければ、受注できないのでこの確認は重要です。

このようなメインの流れに加えて、交換部品の有無(在庫がなければ発注)、コイル巻替えの有無、バランス調整の有無など細かいパターンを場合分けで付け加えて行きました。そして、最終的にデータベースにどんな情報を蓄積するのか、大きなラフスケッチのようなものを作成して、リーダーに確認を取ったのです。

次に、現場で操作するタブレットの選定を行いました。グリスにまみれながら、ハン

マーやバーナーを使って作業する荒っぽい現場ですので、もとより耐久性は期待できず、1年もてばいいという考え方で中古のタブレットを購入しました。

開発に使うアプリは、Googleが開発したGsuiteを使いました。これは、マイクロソフトのエクセルやアクセスに似た機能を持つアプリを内蔵したパッケージで、ITベンダーにプログラムを依頼しなくても、ノンコードでの開発が可能なのでこれを採用しました。エクセルとは操作が違うので、慣れるまでに少し苦労しましたが、まずプロトタイプを作る場合にはとても便利なパッケージです。

続いて、作業指図書の電子化を行いました。たまたまですが、システムベンダーの経験がある社員がいたので、大変助かりました。紙ベースで運用していた作業指図書を参考に、Gsuiteの表計算ソフトを使って同じ形式の表を作成し、そこに数値や文字を記入すれば、データベースに情報が格納されるように作りました。ITベンダーに外注しなかったので、かなりの手間がかかったのは事実ですが、自分たちで作る方が知識も蓄積するので、実際に使うときに役立ちます。

デジタル化により目指した機能

実を言いますと、私はこのシステムの完成を見ていません。開発の途中で任期が満了し、親会社のP社に帰任したからです。その後P社のオーナーと意見が合わずに退社したので、最後まで開発の指揮を取ることができませんでした。

ですので、以下は私の構想がこう実現しているはずだという推測も交えてご説明します。まず1つ目は、受注案件管理機能です。営業活動から受注に至るまでには最低でも1か月以上、場合によっては半年以上もかかりますので、売上が十分にあるかは受注段階から管理しておく必要があります。これは、受注前の商談段階から案件をシステムに登録し、案件登録⇒提案⇒商談⇒調整⇒内諾⇒受注(契約)という段階を管理することで、修理するモーターがなくて工場が突然ヒマになるというリスクを回避することができます。

2つ目は、アサインメント管理機能です。先ほどアサインメントという用語の解説を行いましたが、修理業において作業スペースや設備や作業員が確保できているかどうかは、受注にあたってとても重要です。このアサインメントという課題を、空いたスペースにパズルのピースを当てはめていくように、割当てていくような機能を持たせました。またこの機能は、社員の「働き方改革」にも役立てることができます。修理するモーターが少ない時は、どうしてもワークシェアリングのような発想に陥ってしまいます。つまり、大して仕事がないのに、多人数でダラダラと作業してしまうことで、生産性を下げてしまうのです。ですがアサインメント管理機能を使えば、あらかじめ仕事が少ない時には、パズルのピース(作業員)が余ることを意味しますので、余った作業員は休暇を取ればいいのです。1週間ぐらい前から分かっていれば、家族サービスや自分の趣味など、時間の使い方を考える余裕がありますので、社員にとっても仕事と生活のバランスを取りやすくなります。

3つ目は、作業工程管理機能です。今までの作業進捗は、モーター単体に1つずつ添付された作業指図書を見て把握していました。モーターは工場内にバラバラと点在していますので、作業指図書も散らばっており、工場全体の作業工程を一元的に管理するツールはありませんでした。作業指図書のデータがタブレットからデータベースに一元化されることで、作業工程の全体を把握して管理することができます。先にご説明したアサインメント管理と比較すれば、当初の作業スケジュールに比べて実際の作業進捗に問題がないかが把握でき、遅れがあれば早めに挽回することができます。

4つ目は、原価管理機能です。修理業における原価は、主に材料原価と労務費原価になりますが、材料原価(主にベアリング)よりも労務費原価の方が変動しやすいので管理が重要になります。以前ご説明した通り、同じ修理作業でもベテランと若手では倍以上の時間差が生じることは珍しくありませんし、ベテランが手抜きをしてわざと時間をかけて作業することもあります。個々のモーターに要した修理時間をデータベースに集計して、標準修理時間と比較したり、同機種の他のモーターの修理時間と比較したり、スキルマップの達成度別に順位付けしたり、色んな分析をすることで、社員の指導や評価や生産性向上に役立てることができるのです。


以上が、私の経験に基づいた「PMI体験記」となります。かなり盛りだくさんな内容でしたので、気がつけば15話まで来てしまいました。ここまで紙数を費やして言いたかったことは、PMIは形式面だけ整えても意味がないということです。実際にはヒトが運用するのですから、そこには情も必要です。読者の皆さんには、できるだけ私の意図が伝わるよう工夫したつもりですが、言葉足らずで誤解を与えた部分もあったかもしれません。もし次にご縁があれば、もっとリアルな伝え方で改めて皆さんにPMIをご紹介できればと思っています。

最後までご愛読ありがとうございました。




 
 
 

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