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シリーズその④ 「PMI体験記」第2話「事例紹介」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

第2話は、私が体験した事例の内容を「事例紹介」としてお伝えします。


実務におけるPMI

前稿では、PMIの概論について解説しました。そこでは経営統合、業務統合、意識統合に大きく分けられるとお伝えしましたが、コンサルタントやPEファンドがPMIを実施する場合、一般的に経営統合と業務統合に重点が置かれる傾向があります。

理由は2つ考えられますが、1つ目は経営統合や業務統合が進まないと、会社が回らないからです。2つ目の理由としては、経営統合と業務統合は、やるべきことが明確なので進めやすいということもあります。このような理由から、経験の少ないコンサルタントやコストカット重視型のPEファンドにおいては、経営統合と業務統合を中心に進めて、意識統合は置き去りにされやすい傾向があります。

ですが私は前稿で、PMIで最も大事なのは「子会社(社員)とのコミュニケーション」だとお伝えしました。これはまさに、意識統合に直結します。

よく、「PMIは最初の3か月(あるいは100日)が肝心だ」と言われることがあります。これは、「鉄は熱いうちに打て」の例えと同じく、早く手がけた方がより高い効果が期待できるからです。ここで大事なのは、この最初の3か月間で、子会社とのコミュニケーションを十分に行って、意識統合をきちんと進めるということです。

PMIは長期にわたる活動ですので、最初の3か月ですべてが完了するわけではありません。経営統合でも業務統合でも、すぐに解決する課題もあれば、時間をかける課題もあります。それぞれの課題をいつまでに解決するかの判断が必要ですが、例えば子会社にとって特別なこだわりがあるルールや制度に関しては、ある程度時間をかけて親会社に統合する必要があります。つまり、子会社の社員の思いを汲んであげる必要があるのです。

事例の内容

以下では、私が実際にPMIを経験した会社の事例をご紹介します。

この会社はモーターの修理業で、親会社とは類似業種になり、全くの同業ではなく隣接する業界でした。また会社の所在地は、親会社から600㎞以上離れており、交通の便もあまりよくないので、親会社の目が届きにくい環境にありました。

前オーナーは創業家の3代目で、高齢で他に後継者がいなかったため、M&Aで会社を譲渡しました。3代目の方は女性社長でしたが、男中心の業界で、あまり技術的にも詳しくなかったので、色々とご不安もあったと思われます。ただ、先代から受け継いだ会社をきちんと守っていこうという意識は高い方で、会社の規模の割に規程やルールはしっかり整っていました。会社の将来とご自分の体調面を勘案して、ちょうどよいタイミングで譲渡されたのではなかったかと思います。

従業員は30名あまりで、パートの主婦もおられました。正社員はほぼ全員が技術者で、平均年齢も若く、業界内での技術レベルはかなり高かったです。創業者がご存命の頃から生産管理系のコンサルタントを雇い、約20年に渡って社員の教育を続けて来られたそうで、上場会社でもないのに(と言っては失礼ですが)ISO14000シリーズの認証を持っていたり、スキルマップを整備していたり、また会議が多かったり、とても珍しい会社だったと思います。

取締役は3人おり、いずれも30代後半から40代前半でしたので、取締役としては若かったように思います。それぞれがしっかりと役割分担できており、会社の日常業務は回るようになっていましたが、まだ経験が浅いので経営的な視点には欠けていたように思います。

売上は2億5千万程度でしたが、経常利益は2500万ほどあり、中小企業としてはかなりの高利益でした。理由としては、人件費が少し低かったことと、建物や設備が古くて減価償却費があまりかかっていなかったこともあるのですが、一番の理由はニッチ領域で独自の価値を提供していたので、価格競争に巻き込まれずに済んだことです。ただし、整備工場は住宅街の中にあり、あまり遅くまで操業できないことや、敷地が狭かったことから、生産能力の余剰はほとんどありませんでした。

このような会社に、親会社の取締役である私がこの会社の専務取締役として派遣されたのです。親会社の社長がこの会社の社長を形式上兼務していましたが、普段は親会社にいますので、現地での実質上のトップは私になります。私の任期は2年と決まっていて、任期が終われば親会社に帰任することが決まっていました。この会社に対して私が行ったPMIについて、次稿で説明したいと思います。




 
 
 

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