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シリーズその④ 「PMI体験記」第3話「PMIの事前準備」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。

そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。

本日は第3話として、私が体験した事例の内容を「PMIの事前準備」としてお伝えします。


最初に行うべき現状把握

まず初めにお断りしておきたいのですが、本シリーズでご説明する内容は、すべて私が体験した事例に沿って判断したものです。PMIにおいては、親会社と子会社の規模感、業種の関連度、企業文化の違いなど、さまざまな要因によって対応策は千差万別であるとお考え下さい。ですので以下の解説では、読者の皆さんにとって今後のご参考になるように、私がなぜそのような判断をしたのか、理由をきちんとつけてご説明したいと思います。

私が親会社(以下、P社といいます)から派遣されて、子会社(以下、S社といいます)に専務として着任した時にまず行ったのは、現状把握です。どんなPMI案件でも、子会社に嫌われてアレルギー反応が出てしまっては失敗です。かといって、子会社の顔色ばかりを気にして必要な改善ができなければ、これも失敗に終わります。子会社の社員の心情に配慮しつつ、やるべきことができる信頼関係を構築すること、これが最初に考えるべき事項です。

P社において、私が把握した当時の状況は以下の通りです。

・社員の年齢層は若く、規律を守って礼儀正しい

 ⇒若いので、仕事と家庭の両立にかなりのエネルギーを必要とするはず

 ⇒規律があることは好ましいが、そこに不合理やストレスはないか?

・取締役の年齢は若く、一般社員とほぼ同世代

 ⇒同世代で上下関係が発生しているが、感情的な軋轢はないか?

 ⇒血気盛んなプロパー取締役が、S社による自主運営(自治)を望んでいないか?

・P社とS社は、同業ではなく隣接業種

 ⇒同業としてのシナジー効果はない(規模拡大、取引先共有、技術共有など)

 ⇒隣接業種としてのシナジー追求は時間がかかる(業務連携、技術応用など)

・S社の規程やルールは整っており、現状のまま運営継続が可能

 ⇒同業ではないので、業務上の不都合やリスクは少ない

 ⇒いずれ統合は必要だが、その前にP社の規程見直しが必要

・積極的な営業活動はしておらず、受注は既存顧客または紹介のみ

 ⇒リピート率が高いのは、S社の技術力の高さと事業領域の適切さによる成果

 ⇒とはいえ、P社に業績向上の意向があるので、新規開拓営業が必要

・工場敷地が狭く、周辺に住宅が多く、設備が老朽化している

 ⇒売上1.5倍までが限界で、2倍を目指すなら工場移転が必要

 ⇒工場移転する場合は、技術のある社員が辞めない近隣に移転することが必須

お互いの立場と役割を明確化する

このようにS社の現状を把握した後、私は全社員を集めて、今後の方針とスケジュールについて説明をしました。

まず最初に伝えたのは、「私の任期は2年間で、それ以上でも以下でもない」という事実です。これは非常に大事な情報で、S社の社員にとってみれば、親会社から来た私がどんな人間なのか、いつまで居座るのか、すごく気になっているはずです。できれば威張らない人で、できれば仕事は従来通りに任せてもらえて、できれば早めにP社に帰ってくれて(後任なしで)、できれば給与や休暇などの待遇面は改善してくれたら、などのようなことを考えているのだと想像できます。ですので、まずは任期を明らかにした上で、その期間をどう使うのか、彼らに考えさせようと思ったのです。

2番目に社員に伝えたのは、「2年後にどうなるかは君たち次第」だということです。つまり、私のいる2年間ですべての課題が解決すれば、若いプロパー役員に経営を任せる選択肢もあるが、課題が解決しなければ後任が派遣されますよという意味です。その後任が私よりやりやすい人間かどうかは分からないですし、その後任が期限なしに居座る可能性もあるので、そうなればお代官様vs町人の構図になります。なので、子会社自治を勝ち取りたければ自分たちで頑張りなさい、と説明したのです。ここまで言った時点で、社員には私の意図していることが理解できたと思います。

3番目に宣言したのは、「私を肩書きで呼ぶな」ということです。このメッセージの意図は、私が肩書きを笠に着て社員にあれこれ指示をするようなイメージを持たせたくなかった、というところにあります。年齢や立場の違いこそあれ、縁があってS社で一緒に仕事をする関係になって、会社の価値向上に努力するという意味では全員同じだという意識を植え付けたかったのです。これは、現状把握の際に、プロパー取締役がほぼ同年代の社員に偉そうな態度や威圧的な言動をしていることが分かったので、それを戒めることも狙いとしてありました。以前から何度も書いていますが、会社には「公」の精神が必要で、会社から与えられた肩書きを私的な利益や威圧に使うことは許されません。このメッセージは、威張っているプロパー取締役に対して苦々しく思っていた社員にとって、すごくインパクトがあったと思います。

4番目に伝えたのは、「最初に全員と面談して、社員の意見を聞く」ということです。すでにお伝えした通り、PMIにおいて最も大切なのは「子会社(社員)とのコミュニケーション」です。経営統合、業務統合はもちろんやるが、親会社の勝手な思惑を押し付けることなく、子会社の事情や歴史や社員の意見にも十分配慮する、という宣言になります。これによって、自分たちが活発に意見を出さなければむしろ不利益になる、という意識が社員に行き渡ったと思います。


このようにして、私はS社がこれから進む方向性と、その間に社員が果たすべき役割について説明しました。伝えた内容は大したことではなく、言ってみれば当たり前の話ばかりなのですが、これを面と向かって全員に伝えるということがとても大事なのです。私が着任するまで社員は色んな想像を働かせていたと思いますが、この説明会によって、思惑の違いはあれ社員の方向性は統一されました。次稿では、社員1人1人と行った面談の内容と、その結果についてお伝えしたいと思います。




 
 
 

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