シリーズその④ 「PMI体験記」第9話「意識統合」
- ritsu_dragon

- 2024年8月7日
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読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。
シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。
シリーズその③では、「公」と「私」について私の考えをご紹介しました。
そしてシリーズその④では、「PMI体験記」をお送りしたいと思います。
本日は第9話として、「意識統合」についてお伝えします。
意識統合と個別面談
私は第1話で、PMIにとって最も大切なのは「子会社(社員)とのコミュニケーション」であるとお伝えしました。その考えをもとに、S社に着任してまず個別面談を優先したと、第4話「個別面談」で解説しました。実はこの個別面談によって、意識統合はほぼ出来上がっているのです。面談を何度も繰り返し、P社がS社に何を期待しているのかを伝え、今のS社でできること、できないことは何かを明らかにし、目標を達成するために社員個人個人が何をしなければならないのか、この大きな流れを諄々と解説することで、社員に明確な目標意識と貢献意欲がわいてきます。このように社員の気持ちがまとまれば、意識統合はほぼ完成といっても差し支えありません。
私が着任した時は、P社グループに参加した記念として特別ボーナスが出るとか、P社の給与体系に合わせて昇給するとか(実はS社の方が給与が高かったのですが)、根も葉もない噂が流れていたので、その収束は大変でした。子会社社員の意識というのは、親会社側からは想像もつかないところにあることも多いのです。まずはP社が親会社になったといって、S社にお金が降ってくるような夢物語はありませんよ、という話から始めて、S社の社員の給与や賞与がアップするためには、肝心のS社が儲けなければいけないですよね、という方向で私はこの噂を鎮めました。ただし、全部否定すると社員の落胆が激しいので、冬のボーナスに全員一律で少し上乗せはしました。S社社員の気持ちも考えずに、「特別ボーナスとか昇給とか、何をバカなことを言ってるんだ!」と頭ごなしにやってしまうと、P社グループへの参加意識、貢献意識は吹き飛んでしまうのです。
ポストPMIを見据えて
S社のPMIについて、以上でひと通りの解説を行いましたが、私はこれで終わるつもりはありません。なぜならPMIは、経営目標そのものではなく準備段階に過ぎないからです。PMIによってどのようにグループ統合を達成するのかだけではなく、グループとして統合された子会社がどのように発展していくのか、つまりポストPMIまで言及しなければ、PMIの解説としては十分ではないと考えています。
私がS社において行ったPMIは、作業の大部分が個別面談でした。ですので、会社の状況が本当によく理解できたのです。目の前の統合作業だけではなく、この先S社をどう発展させていくのか、その課題が面談からあぶり出されました。
S社におけるポストPMI
私が感じた課題の1つ目は、スキルマップにありました。以前お伝えした通り、S社は30人程度の中小企業としては珍しく、制度やルールがしっかりしていた会社でした。コンサルタントとも契約して、5S運動やクレーム処理やスキルマップの整備を行っていました。また、その必要性はともかくISO14000の認証も取得していました。しかし、そういう取り組み自体は素晴らしかったのですが、そのコンサルタントの方との関係が長すぎて、内容がいささかマンネリ化していたことが問題でした。
前稿で業務統合についてお伝えしましたが、そこで私が問題視したのが人事評価基準です。S社ははっきりとしたテクノロジーファーストの会社であり、スキルマップを整備するなどの着眼点も良いのに、そのスキルマップをきちんと活用して、指導⇒スキルアップ⇒業績アップ⇒人事評価というプロセスを明確に描いていなかったのです。そこで私は、スキルマップの全面的な見直しに着手することにしました。
課題の2つ目は、マーケティングです。すでにお伝えした通り、S社が属するモーター修理業はある意味分業が成り立っている業界で、得意な型式やサイズが会社ごとに異なるので、同業他社とは競合というより協業関係にあったといえます。ですので、ガツガツ営業しなくても良いとも言えますが、それでもS社が暇な時期に都合よく仕事を回してくれる訳ではありませんし、紹介者がマージンを取るので利益率は落ちますし、お付き合いということで安い仕事も受けなければならなくなります。
もともとS社の工場敷地や設備能力には限界がありましたし、マーケット的にも需要側が横ばいなのに供給側(同業他社)が高齢化のため廃業している状態でしたので、仲間同士の狭いコミュニティで仕事を分け合うようなことはしなくても良いはずでした。そこで私は、新規顧客の開拓をすべく、マーケティング機能を新設することにしたのです。
課題の3つ目は、DX化です。S社はモーターの修理業であるため、あらゆる種類のモーターを修理しています。また、何をどこまで修理するかは、持ち込まれたモーターのコンディション次第です。また、修理費用の見積りは、モーターを分解、点検してからでないと算出できないという事情がありました。そのため、修理されるモーターが搬入されると、そこに何枚もの紙が伝票として添付され、点検結果、修理箇所、見積り内容、作業進捗などを管理していたのです。
この伝票は非常によく考えられており、修理作業には不可欠なのですが、記入が煩雑であることと、記入内容がうまく伝わらずに作業ミスが生じてしまうという欠点がありました。またこの作業伝票は、S社の修理ノウハウそのものであり、これをデジタルデータとして資産化することで、見積作業の効率化や、生産計画策定の自動化や、営業活動への活用などが図れる宝の山でもありました。そこで私は、修理伝票をペーパレス化して、タブレット端末でデータ化することにしたのです。
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