シリーズその② 「カウンセリングのススメ」 第5話 「カウンセリングの手法」
- ritsu_dragon

- 2024年6月24日
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読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。
シリーズその②では、どの会社にもほぼ共通した課題で、なおかつ改善の効果が最も出やすい領域として「人材開発」を取り上げ、「カウンセリングのススメ」というタイトルで解説したいと思います。
第5話は、「カウンセリングの手法」についてお伝えします。
カウンセリングの狙い及び要点をまとめる
最初に、あなたの会社にとってなぜカウンセリングを導入するのか、それによって何を達成したいのか、きちんと整理する必要があります。
第2話で、カウンセリングに期待する効果について解説しましたが、そこでは下記の5点を挙げました。いずれも、会社の非財務資産(今後は無形財産と呼びます)としての価値を高める効果があります。
①従業員の考えを聞く
②従業員に会社の考えを伝える
③従業員の帰属意識を高める
④人材育成により、レベルの底上げを図る
⑤人材構成の適正化を図る
①は、風通しの良い企業風土や、環境変化に強い企業体質につながります。
②は、会社の機動力や結束力を高めることにつながります。
③は、離職率の低下やブランド力向上につながります。
④は、言うまでもなく人材という資産の価値を向上させます。
⑤は、会社の免疫力と組織の新陳代謝を高めます。
上記は一般的な例であり、どの項目が重要であるかは会社ごとに異なりますが、カウンセリングの効果や狙いを明確にすることで、会社にとってどんなカウンセリング制度が必要なのか、全社的な共通認識として持つようにしてください。手順書やマニュアルのかたちでまとめることをお勧めします。カウンセリングのやり方がバラバラであっては、従業員が混乱して逆効果となってしまうからです。
また、上記のうち④については、人材の価値判断や人事評価に直結しますので、制度設計に時間がかかります。いっぺんに①から⑤までルール化することは難しいので、まずは④を除く項目を導入してカウンセリング慣れしておき、後から④を追加するやり方が現実的な進め方ではないでしょうか。
カウンセリング構造を決める
次に、誰が誰にカウンセリングを行うのか、担当分けを決める必要があります。
これを、カウンセリング構造といいます。
従業員の少ない会社であれば、社長が全社員のカウンセリングをまとめてやるのも1つの方法です。ただし、それでは社員の本音が出てこない可能性がありますし、また社長にうまくカウンセリングする自信がない場合もあります。そのような場合には、最初のうちだけ外部の専門家にカウンセラーを依頼してもいいでしょう。徐々にスキルを身につけて、社内で行えるようになればいいのです。
それ以上に規模の大きい会社であれば、階層的な構造を構築する必要があります。
例えば、社長⇒役員、役員⇒管理職、管理職⇒一般社員のような構造です。つまり、管理職は役員からカウンセリングを受ける立場であると同時に、一般社員にカウンセリングを行う立場になります。ここで、カウンセリングを行う側をカウンセラー、受ける側をカウンセリーと呼びます。
ここで、カウンセラーとカウンセリーの関係を、直接の上司部下にするのか、それとも別の部署の人にするのかについては検討が必要です。直属の上司であれば、業務上気付いたことを具体的にアドバイスできるので、高い効果が得られる場合もあります。ですが、つい説教がちになってしまったり、部下からの本音が出てこなかったりなど、デメリットもあります。一方別の部署の上司であれば、業務上の接点が薄いことから、カウンセリーの話をじっくり聞いてあげることで、本音を引き出しやすいというメリットがあります。ですが、このやり方はカウンセラーの腕次第という面があり、下手なカウンセラーだと当たり障りのない世間話だけで終わってしまい、カウンセリーから何も引き出せない可能性があります。
私がいた監査法人で実施した時の実例をご紹介しますと、カウンセラーは直接の上司を避けて別の部署の上司が担当しました。ですが、やはりカウンセラーの能力が不足していて、想定した成果は出ていなかったように思います。ですので最初は、上司部下の関係でスタートした方がいいと私は思います。
価値判断基準を定め、人事評価基準と整合させる
先ほど、④に関しては時間がかかるので後回しにしてもよいと説明しましたが、いずれは人材開発のためのモノサシを導入して、それを人事評価基準と合わせて運用していく必要があります。中小企業においては、明確な人事評価基準がなく、いわば社長のさじ加減という会社も多いと思いますが、それでは従業員からの積極的な貢献は得られません。会社にとってどういう従業員が役に立つのか(価値判断基準)、そこに到達すればどんな処遇(給与や役職)が得られるのか(人事評価基準)、これを明確にすることで、従業員が積極的に自分を磨き、会社に貢献しようとする意欲が生まれます。
モノサシとしては、スキルマップとコンピテンシーをご紹介しました。どちらを採用するかは、その会社が従業員に何を期待するかによります。私の経験で言えば、スキルマップは数値化しやすいので客観的な評価が可能ですが、コンピテンシーは抽象的で数値化しにくいので、運用にはかなりの苦労が伴います。私のいた監査法人でも、コンピテンシーの達成度をカウンセリング時に5段階、その後人事評価時に8段階(なぜ途中から増えるのかはサッパリ分かりません)で評価する仕組みでしたが、モノサシが曖昧過ぎて途中からは論理的な議論が崩れてしまっていました。
ただそれでも、何もなかったルール無用の時代に比べれば、人事評価のレベルは格段に上がったように思います。これまでコンピテンシー方式に対してあまりいいコメントはしませんでしたが、100人を超える従業員数がある会社であれば、ぜひ導入をお勧めしたいと思います。
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