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シリーズその② 「カウンセリングのススメ」 第6話 「カウンセリング時の留意点」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、どの会社にもほぼ共通した課題で、なおかつ改善の効果が最も出やすい領域として「人材開発」を取り上げ、「カウンセリングのススメ」というタイトルで解説したいと思います。

第6話は、「カウンセリング時の留意点」についてお伝えします。


カウンセラーは「会社の代弁者」

第2話においてカウンセリングの定義をご説明した際に、カウンセラーは「会社の代弁者」でなければならない、ことを強調しました。人間は普段、「I am」で考えることが当たり前なので、第三者的な立場で会話するのは本当に難しいのですが、これがカウンセリングのキモですので、必ず守るように心がけてください。

人間は誰でも、自己愛があります。例えばカウンセリーに改善点があったとしても、「君ィ、○○ができないのは困るなあ、改善してもらわないと」と頭ごなしに指摘されたら、どうなるでしょうか?恐らく、「いえいえ、私はちゃんとやっているんですが××のせいで」と責任転嫁して非を認めないか、あるいは表面上は「そうですね、分かりました」と言っておきながら心の中で認めないか、どちらかだと思います。

更にそのカウンセリーは、「このカウンセラーは、部下の指導ができないと自分の評価に響くから必死になっているんじゃないか」とカウンセラーの心理を勘ぐってしまうでしょう。このように、カウンセラーにとっての「I am」トークは、絶対にカウンセリーの心に響きません。

カウンセリングは、信頼関係がすべて

では、会社の代弁者であるためにはどうすればいいのでしょうか。まず第1に、課題の指摘だけではなく、改善した事項も指摘して、公正な姿勢を心がけてください。「君は~~の業務で、△△についてよく頑張ってくれていますね。これは昨年指摘した☆☆のコンピテンシーが改善したと会社では評価しています。でも、○○という新しい課題も出てきたので、次はこっちを改善しましょうか」という話し方です。

第2に、カウンセラーの会話は問いかけを基本にして、肝心なところはカウンセリーに回答させてください。他人事ではなく、自分事にしてもらうためです。「・・が問題じゃないかと思うのですが、君はどう思いますか?」「会社としては@@じゃないと困るのですが、どうにか改善できませんかね?」といった話し方になります。

第3に、会社がカウンセリーにどう成長して欲しいのか、将来像を明確に伝えます。これは、コンピテンシーやスキルマップに照らして具体的に説明します。「いま入社何年目で、来年は主任に昇格して何年目になるので、**のコンピテンシーが身についていて欲しい」という感じです。

第4に、カウンセリーがこの会社でどう成長したいのか、本人の希望を聞きます。会社の希望だけ伝えて、本人の希望を聞かないのはダメです。また、本人からの希望に対して、「会社の事情に合わないから無理だなぁ」などと門前払いするのは最悪です。今すぐには難しいという会社の事情を話したり、希望が叶うために必要な条件やスキルを説明したり、きちんと論点を整理してあげてください。最終的に本人の希望が叶わなくても、本人が納得するための十分な材料が必要なのです。

第5に、カウンセリーから投げられたボールは、カウンセリングのルールに従ってちゃんと投げ返してください。よくあるのは、話を聞くだけで流してしまうことです。そうなるとカウンセリーは、「この人に何を言っても無駄だ」と判断し、心を開かなくなります。ましてや、話を聞いて説教するのはもっとダメです。説教するということは、「コイツ、身の程知らずが高望みして」とか、「それより先にやることやれよ」とか、ネガティブな感情をカウンセリーに対して抱いていることを意味します。「会社の代弁者」が、個人的な感情を勝手に抱くのはルール違反です。

第6に、何度も言いますが主語は「会社」です。上記の文例でも、「会社では評価しています」「会社としては」という言い方で、主語は会社になっています。

恩着せは絶対ダメ

カウンセリングでの評価結果を人事評価に使うのであれば、注意しなければならないことがあります。それは、カウンセリングの結果を恩に着せてはいけないということです。例えば、カウンセリーが成長した結果、カウンセリングが高評価になり、それが人事評価での昇給や昇格につながった場合、どうしてもカウンセリーはカウンセラーに恩を感じてしまいます。

ですが、ここでも忘れないで欲しいのは、カウンセリングは会社が主語だということです。カウンセラーは会社を代弁しただけで、その人材開発が成功したのはカウンセリーの努力の成果であり、会社とカウンセリーが共有する果実なのです。カウンセラー自身は、そうやって部下を成長させた事実をさらに上位のカウンセラーに評価してもらえばいい話であり、部下に恩を着せるのは筋違いということになります。

カウンセラーが恩に着せれば主語が変わってしまい、「俺のおかげで昇格させてやった」ような話がまかり通ることで、会社のガバナンスは著しく損なわれます。

業務外の相談について

第2話において、カウンセリングは「業務上の」助言や指導であると解説しました。ですが、私生活の問題が業務に影響することは良くありますので、その場合はどうすればいいのでしょうか。私はそのような場合に、会社の立場で可能な限りの助力や助言をしてあげることにしています。

監査法人時代のエピソードばかりで恐縮ですが、ある女性カウンセリーがいて、その方はご主人もお子さんもいたのですが、第2子を産むかどうかで相談されたことがあります。読者の皆さんには馴染みがないかもしれませんが、女性会計士というのはとても過酷な職業で、繁忙期に深夜残業が当たり前の監査法人で、結婚、出産、子育てを両立させるスーパーウーマンなのです。私はこの人に限らず、女性会計士をカウンセリングする時は、その過酷な労働環境や生活環境についてきちんと整理した上で、人生の幸福を最優先にしましょうと方向づけしてからカウンセリングしています。この人生の幸福には、監査法人を退職することも選択肢に含みます。

あくまで会社(監査法人)のカウンセリングですので、私生活に踏み込むのはご法度なのですが、私は監査法人がその人にしてあげられるバックアップ策について話しました。産休制度、育休制度はもちろん、時短勤務や担当会社の調整、繁忙期をうまく避ける工夫、そして彼女のキャリアに与える影響など、色んな角度から解説しました。その上で、監査法人の退職も含めて、何が最もご自分にとって幸福か、選択してくださいと言いました。その女性会計士は、みごとに第2子の出産を乗り越えて、現在も元気で監査法人勤務を続けています。男性である私にとっては荷が重い相談でしたが、余計な感情を交えずにカウンセラーとしての責任を果たせたと思っていますし、何よりも相談してくれたその女性の勇気に今でも感謝しています。




 
 
 

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