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シリーズその② 「カウンセリングのススメ」 第7話 「難関カウンセリー対策」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、どの会社にもほぼ共通した課題で、なおかつ改善の効果が最も出やすい領域として「人材開発」を取り上げ、「カウンセリングのススメ」というタイトルで解説したいと思います。

第7話は最終話となりますが、「難関カウンセリー対策」についてお伝えします。


組織としての度量

どんな組織にも、変わり者と言われる人はいます。自己顕示欲が強いとか、責任転嫁ばかりするとか、コミュニケーションが苦手とか、思い込みが激しいとか、周囲の同僚や上司にとっては扱いにくい存在です。ただ、こういう人たちが無能かと言えば、実はそうとも言い切れないことがあります。

自己顕示欲が強い人は、リーダーシップについての理解が足りないだけかもしれません。責任転嫁する人は、自己愛のバランス調整が下手なだけかもしれません。コミュニケーションが苦手でも、閉じた業務で高い成果を発揮するかもしれません。思い込みの激しい人は、クリエイティブな分野で能力を発揮するかもしれません。

日本人は調和を大事にする民族ですので、異分子が入ると排除したくなります。ですが、平均的な常識人ばかりの組織というのは、強靭さに欠けます。会社の業務は多岐に渡っていますので、変わった着眼点を持った人や、非常時に役立つ能力を持った人が必要になる場面もあります。会社が組織としての度量を広く持つために、変わり者のカウンセリーにも力を入れることが求められるのです。

親でもなければ兄弟でもない

私は監査法人に限らず、色んな場面でこういった変わり者のカウンセリングを担当してきました。そこで最も役立っているのが、私が友人から教わった「親でもなければ兄弟でもない」という金言です。これは、ちょっと相手を突き放した、冷たい言葉のように聞こえますが、実はそうではありません。この言葉には、「私はあなたの親でもなければ兄弟でもないので、変な情や甘えに流されずに最善の解決策を探しましょう」という積極的な意味がこもっています。私が難関カウンセラーを担当する時には、必ずこの言葉でお互いの立場を確認します。この言葉には、カウンセリングにおいて大切な要素が多数含まれているのです。

・親兄弟だったら、身内なので感情が入ってしまう

 ⇒親兄弟じゃないので、きちんとした距離感で冷静に対応できる

・親兄弟だったら、甘えを許しどこまでも面倒を見てしまう

 ⇒親兄弟じゃないので、甘えを許さない反面、自律的な改善をサポートできる

・親兄弟だったら、ひいき目に見てしまう

 ⇒親兄弟じゃないので、ひいきをしない反面、成果や功績は客観的に評価する

難関カウンセリーは、潜在的能力は高いかもしれませんが、人間として未熟な部分がまだ残っていて、だから変わり者の烙印を押されている人が多いです。そういう人は、だいたい自己愛が強く、変わり者扱いされている自分を守るために「正当化」という殻に閉じこもります。その「正当化」という殻を破らないと、カウンセリングは始まらないのです。「親でもなければ兄弟でもない」という当たり前の言葉は、「正当化」という殻を破るためのマジックワードなのです。

具体的な対応のポイント

まず1点目に、難関カウンセリーの人材開発には2年かかると思ってください。これは、私が彼らを担当してきた中での経験則です。難関カウンセリーは、もともと難しい性格が災いして、これまでの人間関係で良い経験を持っていない人がほとんどです。そういう人が、「正当化」という殻を破るには時間がかかるのです。

2点目に大事なのは、「全力で一緒に本人の幸福を考える」ということです。難関カウンセリーは、多くが殻に閉じこもっています。殻に閉じこもった人はメンドクサイ人なので、きちんと相手にされて来なかったという経験を持っています。それが、会社の業務に限った話とはいえ、まっすぐ全力で自分のサポートをしてくれたらどう感じるでしょうか。この「全力で一緒に本人の幸福を考える」行為こそが、従業員の帰属意識を高め、組織としての度量を示すことにつながるのです。

3点目は、「否定しない」ことです。これは、「何でもオッケー許します」という意味ではなくて、間違いを自分で自覚させる、つまりカウンセラーから間違いを指摘しないという意味です。難関カウンセリーから、半ば思いつきで突拍子もない希望が出てくることが良くあるのですが、その時の対処法です。会社のルールや秩序をきちんと説明して、その希望が叶うには遠い道のりがあると認識させるだけで結構です。例えば、「君が希望している海外勤務には、英語の成績や研修への参加など結構なハードルがあるけど、それをこれからやる覚悟ある?」のような言い方になります。それで本人がやると言えばチャレンジさせればいいですし、現実的じゃないなと気づけば諦めてくれます。

4点目は、「妥協しない」ことです。難関カウンセリーは、多くはプライドが高くて、変わり者扱いされていて、殻に閉じこもっている人です。そういう人が、色んなハードルを乗り越えて会社への貢献意欲を示すには、かなりのエネルギーが必要なので、途中で必ず挫折しそうになります。そこを安易に許しては、カウンセリングの意味はありません。会社にいる限りは、どうやって会社に貢献するのかを真剣に考えるのは従業員としての責任ですので、そこからの逃げ道を与えないことが重要です。

そして5点目は、「退職という選択肢」です。これは、積極的に辞めるよう仕向けるということではなく、カウンセリーにとっての幸福が会社内に存在しない可能性もあることを頭に入れておく、ということです。組織としての度量が大切だとは言え、会社への貢献意欲を見いだせずに本人にとっても不幸な境遇であるのに、それでも慰留するのは無意味です。会社に残る選択肢を全力で考えた結果、幸福は社外にあるという結論になったら、それはそれで応援してあげましょう。

最後に

以上、7話に渡って「カウンセリングのススメ」をお伝えしました。私がこのテーマを重視するのは、どの会社にも共通する課題であって、改善の余地が大いにあるのに、なかなか手をつけられることがない分野だからです。社員が大事だとか、人材は宝だとか、経営者から聞くことが多いですが、その取り組みは意外と抽象的だったりします。読者の皆さんにとって、宝物のありかに気がつく契機となれば幸いです。



 
 
 

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