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シリーズその③ 「経営者に考えて欲しい「公」と「私」」 第3話 「事業承継ケーススタディ」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。

シリーズその①では、課題解決の入り口として、壁打ちコンサルについてご紹介しました。

シリーズその②では、「人材開発」を取り上げ、カウンセリングについてご紹介しました。

そしてシリーズその③では、企業経営において私がとても大事にしている「公」と「私」について解説したいと思います。

第3話は、「事業承継ケーススタディ」というテーマで、ある事例をもとにして「公」と「私」のあり方を考えてみたいと思います。

事例の概要

これからご紹介する事例は、私が実際に関係があった会社の話です。しかし特別珍しいケースではなく、事業承継全般に共通する課題が含まれていると私は思います。

本稿が、これから事業承継を考えようとする皆さんのご参考になれば幸いです。

A社は産業機械のメーカーです。近年注目を浴びている環境関連の機械なので、需要も順調に伸びており、業績も安定していました。

また創業社長は技術者肌の人で、武骨で寡黙な方ですが、良い製品を世に出したいという使命感にあふれ、社内でも人望を集めていました。

A社の管理を担当していたのはご親族の取締役で、非常に仕事のできる方ではありましたが、結構なご高齢のため引退を考えておられました。

そこに創業社長のご子息と、他に製造担当や営業担当の古参取締役がおり、このメンバーで経営陣を形成していました。

事業承継をめぐる事情

創業社長はとても立派な方でしたが、自分の考えを人に伝えるのが苦手なため、後継ぎとなるべきご子息にはあまり助言や口出しをされて来なかったようでした。しかしご子息の力量不足は認識されていて、何とかしたいけれどもどうしていいか分からないというご様子でした。

ご子息の取締役も、会社を見渡して自分しか後継者候補がいないことは理解していましたが、A社を背負っていこうという気概を感じることはありませんでした。いい意味では大らかで包容力があると言えますが、厳しく見ると覚悟が足りないというか、もっと父親から学ぶべきことがあるのに後回しにしている印象でした。

ご親族の管理担当取締役は、創業社長が深く思い悩みながらも有効な手が打てていないことや、ご子息に自覚や実力が足りないことを認識しながら、ご自身の体調不良もあり困っておられる様子でした。

古参取締役は、ご子息のことはあまり評価しておらず、事業承継後の会社に不安を感じていましたが、ご自身の処遇が一番気がかりのように見受けられました。

創業社長へのご提案

このような事情を抱えるA社において、私は創業社長に後継体制構築の提案をしました。事業承継は確かに喫緊の課題ではあるが、まだ後継者の準備が整っていない時期に進めるのはリスクが大きいというのが理由です。

提案内容は大きく2点あって、まず1点目は創業社長から、後継者として備えるべき条件を提示してもらい、我々がご子息にその条件を満たせるようトレーニングを施し、2年後をめどに創業社長がその成果を判定するというものです。そして2点目は、その2年間のトレーニング期間に外部から若く優秀な人材を招き、後継者のサポート役にするというものです。

持って生まれた性格まで修正することはできませんが、会社経営には押さえるべきポイントがあります。ご子息にはそういう重要ポイントを学んでもらい、自信と自覚が備わってくれば、人格的にも重量感が出てくると考えた上でのご提案でした。また不足部分があったとしても、親の世代の古参取締役ではなく、同じ世代の番頭が支えることで、安定した経営が見込めるという狙いもありました。

結果と振り返り

しかし創業社長は、私の提案を採用しませんでした。明確に口に出さない方なので、理由は想像でしかありませんが、時間が解決することに期待したのだと思います。

このケーススタディを「公」と「私」の観点から整理してみたいと思います。

創業社長は、A社(公)を代表する立場でありながら、父親(私)の情と区別することができませんでした。私の提案がベストではなかったかもしれませんが、決断が必要な場面であったことは確かで、そこで先送りを選択したのです。創業社長にとっては、会社も自分も同じようなもの(一心同体)だというのは分かります。ですが、後継者を決める段階では切り離して考えることが必要です。A社は今でもいい会社だろうと想像していますが、もっといい会社になる機会を逸したと私は思います。

後継者のご子息は、そもそも会社(公)の何たるかが分かっていなかったように思います。なので、自分(私)がどうすべきか明確ではなかったのです。風のうわさでは、このご子息が今は社長をされているようですが、創業社長は会長としてまだご在任だそうです。そして、事業承継の影響は分かりませんが、ここ数年の売上高は微減で推移しているようです。


本日ご紹介したのは1つの例ですが、同様のケースを私はいくつも見てきました。

共通して言える教訓は、「事業承継の時にこそ会社(公)と自分(私)を分けて考える」ということです。自然人である経営者の肉体はいつか滅びますが、法人である会社には寿命がありません。健康長寿な会社が増えることを願って、これからも情報発信を続けていきたいと考えています。


 
 
 

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