シリーズその① 「経営者のパートナー」壁打ちコンサルのススメ 第3話 「壁打ちのルール」
- ritsu_dragon
- 2024年6月13日
- 読了時間: 1分
読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
まずはシリーズその① 「経営者のパートナー」壁打ちコンサルのススメについて配信したいと思います。本日は第3話「壁打ちのルール」についてお伝えします。
壁が果たす役割
第1話でご説明した通り、壁の役割を果たすコンサル側にとって大事なことは、余計な細工をせずに来た球をそのまま打ち返す、ということです。
なぜわざわざこの点を強調しているのかというと、一般的なコンサルとは立ち位置が大きく異なるからです。一般的なコンサルタントは、自分の知識や経験をもとにして、専門的なサービスをいわば「能動的」に売るビジネスです。ですが壁打ちコンサルは、答えを自らが提供するのではなく、経営者の中にある答えを引き出すという「受動的」な役割が求められます。サッカーで言えば、自分の技術で相手の陣形を崩していくファンタジスタではなく、堅守からカウンター一発で決めるリアクションサッカーみたいなものです。そもそもの立ち位置が違うことを、明確に認識しておいて下さい。以下、具体的に解説します。
聞き役または論点整理役であること
まず第1に、壁となるコンサルタントは、平板な壁に徹するということです。比喩を避けて具体的にいうと、聞き役または論点整理役に徹するということです。
経営者の打ったボールが、正しく跳ねずにイレギュラーしたり変な回転がかかったのでは、意図した効果は出ません。壁役は変な意見を差し挟むことなく、聞き取り、確認、論点整理、質問による対応にとどめます。
これは、次に解説する「決めるのは経営者自身」という項目に大きく影響します。自分で腹落ちした結論でなければ、決断が鈍ったり歪んだりするからです。
決めるのは経営者自身
第2に、決めるのは経営者自身だということです。コンサルといえば助言やアドバイスなど、積極的な情報発信を求められることが多いですが、壁打ちに関してはあくまでも受けの姿勢が正解です。
経営者から意見を求められることもありますが、それは多くの場合、経営者自身がまだ迷っていて自信がないからです。経営者の説明に自信が感じられない場合は、考察や検討が不足している部分を指摘し、もう一度打球を打ち返すよう促します。それでも意見を求められることもありますが、例えば場合分けによって複数の選択肢を並べるとか、参考事例を紹介するなどにとどめ、経営者自身が決断するように仕向けてください。焦って結論を急ぐ必要はなく、何度も打ち返してもらうことで徐々に決断が固まるのを待ちましょう。
経営者が自分で決めて、自分の言葉で社内に指示を出した時にこそ、会社としての行動力や問題解決力が最も発揮されるのです。
会社からも経営者からも独立していること
第3に、壁打ちコンサルは会社や経営者から独立していること、平たく言えば部下でも家来でもない関係が必要です。もちろん、一部のコンサルタントにありがちな「先生」である必要もありません。
これは見落とされがちなんですが、意外と大事なポイントです。経営者との関係がフラットでないと、壁としての役割に歪みが出てしまい、はね返した打球がまっすぐ戻らなくなり、経営者の決断に悪影響を与えます。私が壁打ちコンサルを引き受ける場合は、必ず自分のポジションや役割について経営者と綿密にすり合わせます。
立場としては、契約期限のあるコンサルタントというのが最も望ましいです。また顧問や社外取締役など、独立性がある程度担保されている立場でもよろしいかと思います。常勤取締役や部長など、業務執行に関与する役職がつくと、どうしても社長との間に上下関係が生まれますし、社内の同僚や部下にとっては、壁の立場か役職の立場か分かりづらくなり、無用な混乱や軋轢を生むことになるのでお勧めできません。
会社の自主性を重んじ、出しゃばらないこと
第4に、壁打ちコンサルは自分の振る舞いに注意を払うことが大事です。
これは、自身を壁という物体になぞらえていることからも分かる通り、黒子でなければならないということです。
上述した通り、決断は経営トップである社長が行いますが、決断の後は社長の指示に従って担当役員や従業員が改善に取り組みます。その指揮命令系統が正しく機能しているのであれば、壁打ちコンサルが余計な手出しをする必要はありません。ただし、何らかの事情でそのような指揮命令がうまく伝達しない事情があるのでしたら、それは別の課題として壁打ちコンサルのテーマとなります。
また、課題の解決にあたって専門性が必要な時には、その分野のコンサルタントに依頼することもありますが、これも会社が独自に選べるのであれば任せましょう。この場合も、会社が専門コンサルを使い慣れていなくて、選定で失敗しそうな場合は、別な課題として壁打ちコンサルのテーマとしてください。
本シリーズの解説で私が一貫してお伝えしたかったのは、「壁打ちコンサルを使って、会社の潜在力を引き出し、自主的に課題を解決する力を養う」ということです。会社の業務について一番知っているのは、その会社の社長であり従業員です。でも何か課題がある時に、その課題をうまく見つけられないとか、掘り下げて検討することが下手だとか、改善策が思いつかないとか、どんな進め方をしていいのかが分からないとか、そういった枝葉の理由で社業に支障をきたすことは良くあります。壁打ちコンサルの役割は、これら枝葉の苦手や不安や知識不足を解決する役割なのです。枝葉さえ解決すれば、根幹である社業が自然に流れていく姿が、目指すべきゴールです。
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