シリーズその① 「経営者のパートナー」壁打ちコンサルのススメ 第4話 「壁打ちコンサルの限界」
- ritsu_dragon

- 2024年6月14日
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読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
まずはシリーズその① 「経営者のパートナー」壁打ちコンサルのススメについて配信したいと思います。本日は第4話「壁打ちコンサルの限界」についてお伝えします。
壁打ちコンサルの前提条件
これまで、壁打ちコンサルのご紹介を続けてきましたが、長所ばかりを強調したのでは読者の皆さんに誤解を与えることになります。そこで本稿では、壁打ちコンサルが万能ではなく、一定の前提条件や限界があることについてお伝えします。
壁打ちコンサルは下記のような前提条件によって成り立っており、この前提を満たさない場合は、期待した効果が出ないことがあります。
・経営者が課題を把握していること
・経営者との1 on 1で解決できること
・課題を検討するタイミングが適切であること
・経営者が正しい判断を下せること
経営者が課題を把握していること
まず1つ目の前提条件は、経営者が課題(その手前にある不安や懸念を含む)を把握していることです。そもそも経営者が課題を把握していなければ、コンサルタントに話題をぶつけることはなく、壁打ちというプロセスに発展しないので何も前に進まないという、至極当たり前の話です。
従業員数が数十人の中小企業であれば、経営者はほとんどの課題を把握していると思われます。ですが、中小企業であっても風通しの悪い会社であれば、従業員目線からの不満を十分に汲み取れないかもしれず、これが課題になっていることもあります。
また従業員が1,000人を超える大企業であれば、会社が大きいので経営者が課題を網羅的に把握することは難しいかもしれません。ですが、大きい組織にはそれだけの統治機構が整っていることが多く、そういった仕組みの中で課題が発見され、共有されていることもあります。
いずれにせよ、会社の課題が発見されず放置されるという状況は、それ自体が壁打ちの対象となります。壁打ちを進めているうちに、経営者が気付かなかった別の課題が見つかった場合には、新たな課題として見逃さないようにしたいものです。
経営者との1 on 1で解決できること
2つ目の前提条件は、経営者との1 on 1で解決できる事象に限られることです。壁打ちは1対1が大前提となりますが、「この点については担当役員の意見も聞かなければならない」とか、「現状認識のためには従業員へのヒアリングが必要」など、他の役員や従業員を巻き込まないと、話がそれ以上進まない場合があります。
そのような場合には、いったん壁打ちのテーマから外して、社内調査など別のプロセスに移行します。その後、別プロセスの結果が得られたら、もう一度壁打ちテーマとして再認識すればいいのです。
また、最初から課題の規模が大きすぎて、全社的なプロジェクトとして進めなければならない課題もあります。全社的なITシステムの更新であったり、業務効率化プロジェクトなどがそれにあたります。
このような場合には、これら大課題に対して経営者としてどう取り組むのか、方針やゴールについて壁打ちで明らかにし、あとは別プロジェクトを立ち上げてそこに任せる、という手順を取ることが望ましいです。
課題を検討するタイミングが適切であること
3つ目の前提条件として、課題を検討するタイミングが適切であることです。
壁打ちがうまく行くためには、その課題がタイムリーでなければならず、「それは今から検討しても手遅れです」という課題に対しては打つ手が限られてしまい、最善策を講じることができません。
例えば、「取引先が10年前には10社あったのに徐々に減少して、3年前から2社になってしまったが、そのうちの1社から取引終了の連絡がきた」という相談があった場合、そもそもその課題には10年前(あるいはもっと前)から取り組んでおくべきだったと言わざるを得ません。仮に社内事情がいろいろあって、取り組みが遅れたとしても、3年前に2社になった時点で動くべきであったと思います。
10年前であれば新規取引先の開拓や、新商品の開発など、打てる手がいくつかあったはずです。しかし、時間という貴重な財産を失ってしまった後では、もうほとんど対応策が見つからないのではないでしょうか。
経営者が正しい選択肢を取りうること
最後に4つ目の前提条件として、経営者が正しい選択肢を取りうることです。
これは、経営者の人格、思考、信条、リーダーシップなどに関する事項です。
会社経営は純粋な経済活動であり、また多くの人材を巻き込んで行う社会活動ですので、経営者にはリアリズムとストイックさが求められます。現実を客観的に直視し、取りうる手段とそれに伴うリスクを分析し、「個(経営者自身)」ではなく「公(会社という器)」を意識した決断ができるか、これが経営者に求められる最も重要な資質であると私は思います。
例えば、「従業員の質を上げたい」という課題があった場合、「どいつもこいつも自分が楽になることばっかり考えて」という発想からのスタートなのか、「業績が悪い中で申し訳ないけど、頑張って欲しい」という思いが根底にあるのかによって、その後の壁打ちは全然変わります。
感情に左右されていないか、個人的事情や言い訳が混じっていないか、現実を直視せず観念的な空論になっていないか、社内力学に影響されて客観性を失っていないか、ここを間違えると正しい判断には決して結び付きません。
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