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時事ネタ配信 「M&A仲介サイトと事業承継(続き)」

読者の皆さん、こんにちは。

株式会社ユナイテッドの藤田です。

こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。


ちょうどシリーズネタが終了しましたので、今回は時事ネタをお届けしたいと思います。

昨日は1話で完結できませんでしたので、本日は「M&A仲介サイトと事業承継(続き)」というタイトルで続けてお送りします。


M&A仲介サイトはどうあるべきか

前稿では、M&A仲介会社に対して指摘されている問題点について解説しました。本来、M&A仲介サイトは全く別のビジネスなのですが、M&A仲介会社がM&A仲介サイトに案件を掲載すると、やはり同じような問題が発生してしまいます。

私は、M&A仲介サイトが第三者型事業承継の切り札になるためには、M&A仲介会社の介在を限りなく制限すべきだと考えています。なぜなら、M&A仲介会社はM&Aのプロなので、買い手も売り手も含め全員がプロであるような大型案件でこそ、本来の機能が発揮されると考えるからです。中小零細の第三者型事業承継だと、買い手も売り手も全員素人であることが多く、その中でM&A仲介会社が唯一のプロとして利益相反を抱えた立場で介在すれば、取引の公正が担保されるとは思えないのです。

私も自分のビジネスの関係上、M&A仲介サイトをよく閲覧します。私は買い手目線で見ているのですが、疑問に思ったり憤りを感じたりすることがあります。以下では、M&A仲介サイトが第三者型事業承継にとって本当に使いやすいプラットフォームになるよう、あるべき方向を提言したいと思います。

売り案件が塩漬けにならないために

M&A仲介サイトを見ていると、「赤字企業、債務超過企業でも売却可能」というコメントを見かけますが、これは買い手目線で見れば疑問に感じます。企業の譲渡価格の決め方には色々ありますが、ものすごく大雑把に言うと、「純資産価格(時価修正含む)+営業利益〇年分」のように決まることが多いです。つまり、赤字企業(=営業利益マイナス)で債務超過(純資産価格マイナス)であれば、譲渡価格はマイナスになってしまい誰も買わないはずです。ですが実際には、このような売り案件がプラスの価格で多数掲載されているのです。

サイトの個別案件を見ただけでは情報が十分ではないのですが、理論的に譲渡価格がプラスになるには、例えば下記のような事情が介在しているはずです。

・今は赤字だが、将来黒字化する確実な見通しがある

・帳簿上は債務超過だが、固定資産の含み益を加味すれば資産超過になる

・帳簿上は債務超過だが、経営者からの借入金を帳消しにするので資産超過になる

・財務諸表に表現できない無形の価値(人材・取引関係・ノウハウ)がある

このような個別事情を記載している案件もありますが、全く記載がない案件もあり、買い手目線からは疑問でしかありません。ここは、M&A仲介サイトが掲載時の審査で適切な助言をして、買い手が判断できる整理した情報を掲載すべきだと思います。M&A仲介会社は必要ありません。M&A仲介サイト側で、掲載手数料を取ってもいいので、売れる状態に整えた案件だけを掲載しないと、塩漬け案件になってしまいます。

本来、M&A仲介サイトの利点は案件成立のスピードだったはずです。売り手の経営者は、このサイトに出せば売れるという期待を込めて待っているはずです。それがスピード成立どころか塩漬けだという事実さえ知らないのなら、あまりにも気の毒です。

M&A仲介会社の関与について

取引の透明性、信頼性を担保するために、M&A仲介会社が関与する場合は、双方代理ではなくどちらか片方のアドバイザーのみに限る(つまりFA方式)べきだと考えています。理由は冒頭でも述べましたが、プロが素人相手に利益相反を抱えたまま対応するという構造が、健全性を著しく欠くからです。

また双方代理は、前章で解説した塩漬け問題にも関連します。M&A仲介会社が双方代理で買い手からも報酬を受け取る構造であれば、買い手にとって買収金額の上乗せとなります。それがレーマン方式により高額な最低報酬が適用され、買収金額を上回ってしまえば、買い手にとっては買収意欲が大きく減退します。ネット通販で300円の商品を買うのに、送料が1000円かかると言われたような気分になるでしょう。

また、仲介方式かFA方式かを議論する以前に、案件規模に比較して報酬が高額すぎると思います。私はプロ同士で時間と手間をかけて交渉するような大規模案件であれば、相応の対価を取ることに異存はありません。ですが、手間も時間もさほどかからず、リスクも限定的な小規模案件において、大規模案件と同じテーブルを使って報酬を計算するのは納得がいきません。M&A仲介会社との契約においては、多くの免責事項が定められており、そもそも責任を負わないようになっていますし、仮にM&A仲介会社の故意や過失により損害が発生した場合でも、賠償額に上限を設けていることが一般的なので、結局は損をしない仕組みになっているのです。

まとめ

以上、第三者型事業承継を推進するための切り札となりうるM&A仲介サイトの解説と、その発展を阻害している問題点についてお伝えしました。私は日本の産業がもう一度花開くことを願って、自分の仕事の残りを費やす覚悟ですが、事業承継という問題はその中で重要な位置を占めています。M&A業界にまつわる不祥事や事件が多数報道されるようになり、そろそろ規制の機運が高まっていますので、一刻も早く業界が健全化することを願っています。


不動産の含み益が著しく大きい場合の対応や、着手金や中間金の取扱いなど、まだお伝えしたいことはあったのですが、今日も紙数が尽きてしまいましたので、またの機会に譲ります。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。



 
 
 

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