時事ネタ配信 「M&A仲介サイトと事業承継」
- ritsu_dragon
- 2024年6月27日
- 読了時間: 1分
読者の皆さん、こんにちは。
株式会社ユナイテッドの藤田です。
こちらのブログでは、私が公認会計士及び経営者として経験した事例をもとに、日本の企業をもう一度輝かせるためのさまざまな考察や提案を配信していこうと考えています。
ちょうどシリーズネタが終了しましたので、今回は時事ネタをお届けしたいと思います。
本日の時事ネタは、「M&A仲介サイトと事業承継」というタイトルでお送りします。
M&A仲介サイトとは
M&A仲介サイトとは、譲渡企業と譲受企業がM&Aでマッチングするためのプラットフォームをオンライン上に提供しているサイトのことをいいます。M&A仲介サイトには、多種多様の企業案件が登録されており、そのプラットフォーム上で譲渡企業・譲受企業がそれぞれ自社の希望条件に合致する候補先企業を探すことが可能です。
これまでの日本では、敵対的買収とか会社乗っ取りなど、M&Aに対して悪いイメージを持つ人も多かったのですが、昨今の事業承継ブームにより第三者へのM&Aを使った承継案件が増えてきたことから、M&A仲介サイトが注目されるようになりました。
事業承継は、経営者の高齢化が問題となっている日本では喫緊の課題になっていますので、M&A仲介サイトは第三者承継の普及に一定の貢献を果たしていると言えます。
事業承継の類型とM&A
ここで事業承継のことも少し解説しますが、事業承継は譲受側が誰かによって、親族型、従業員型、第三者型に分類されます。かつての事業承継は半数以上が親族型でしたが、年々その割合は減少しており、従業員型や第三者型が増えてきています。
親族型と従業員型については、もともと経営者の顔見知りということになりますが、第三者型に関しては、会社を譲り受ける候補企業を探してくる必要があります。
ある程度規模の大きいM&Aであれば、M&A仲介会社同士のネットワークなどで候補企業が見つかったりするのですが、企業価値が1億円を切るような小規模案件ですと、候補企業を探す手間はかなりの負担となります。
この小規模かつ第三者型事業承継の時に、M&A仲介サイトが多く活用されるのです。日本企業のほとんどは中小零細企業です。親族に承継候補がおらず、また従業員も高齢化していて引き継げない、という会社はたくさんあります。そういう意味で、第三者承継を低コストで実現できるM&A仲介サイトというのは、欠くことのできない選択肢になっています。
M&A仲介会社に対する指摘
このように、事業承継にとってM&Aという手段がとても重要であるにもかかわらず、最近はM&A仲介会社に関する問題点が色々と指摘されるようになりました。
まず1点目は、これが最大の問題点なのですが、業界を規制するための関連業法が存在しないことです。業法がないということは、許認可の制度もなく(ライセンスは不要)、監督官庁も存在せず、懲罰に関する規定もないのです。M&Aがこれほど短期間でビッグビジネスに成長してしまったので、規制が追いついていないのだと思いますが、最近はトラブルや犯罪の事例が数多く報道されるようになりました。
私も公認会計士として監査法人にいましたので、監督官庁の指導という名のイジメは多数経験しましたが、それでも業界の全員が良識あふれる人格者ばかりではない以上は、誰かが何らかの規制を設ける必要はあると思っていました。M&A業界にこのような規制がないことは、このサービスを必要としている方々にとって最も大きな問題点だと思います。2点目以降の問題点は、すべてこの規制が存在しないという問題から派生しているので、この1点目が諸悪の根源といえます。
2点目は、高額な手数料体系です。M&Aは売り手と買い手の思惑が合致すれば、双方にとって大きな経済的効果をもたらします。その一方で、成約までには多数の手間がかかりますし、取引に関するリスクも大きいです。そういう意味で、M&A仲介会社が大型案件において相応の高額報酬を取ることは理解できます。ですが問題は、多くのM&A仲介会社が最低報酬を設定していて、これがどんな小さな案件にでも適用されてしまうということです。一般的にはレーマン方式という方法が採用されているのですが、これは簡単に言うと譲渡金額の何%という形で段階的に手数料が上がっていく仕組みです。これだけなら構わないのですが、問題なのは最低報酬金額の存在です。案件の規模にかかわらず、例えば最低報酬2000万円とか2500万円などの高額な最低報酬を設定している仲介会社が存在します。会社そのものの譲渡価格が1000万円で、仲介会社への報酬が2000万円って、誰が納得して払えるでしょうか?私はこの最低報酬が、小規模M&Aの取引活性化を阻害している元凶だと思います。
3点目は、双方代理による利益相反です。日本のM&A仲介会社は、一般的に双方代理という形態を取ります。これは売り手、買い手双方の代理人になる取引形態ですが、売り手と買い手の相反する利益を同時に満足させるという、そもそも無理難題を背負っているのです。M&A仲介会社は、表向きには公正中立を謳ってはいますが、神様でもない限りそのようなことは不可能だと私は思います。海外のM&Aでは、売り手と買い手がそれぞれ別のフィナンシャルアドバイザー(FA)と契約するFA方式が一般的です。お互いが別々のアドバイザーに相談できれば利益相反は起こらないので、日本のM&Aにも早く規制当局の手が入り、公正中立が制度的に担保される仕組みになって欲しいと願っています。
4点目は、成功報酬型の給与体系です。読者の皆さんは、M&A仲介会社の社員の給与水準が高いというニュースをご覧になったことがあると思います。また転職サイトでの求人情報にも、M&A仲介会社から高額の求人が多数出ています。M&A仲介会社の社員の給与体系は、かなり傾斜の激しい成功報酬型となっており、成績がそのまま給与につながるため、社員のモラルハザードを起こしているのです。本来であれば、売り手と買い手にとって最も大きな利益をもたらすように動くべき人が、別の思惑を優先してしまうことで、売り手と買い手の満足が得られず、M&Aというビジネス自体が胡散臭いイメージを持たれてしまっています。
当初は1話完結で予定していたのですが、M&A業界の問題点について興奮して書いているうちに、紙数が足りなくなってしまいました。
すみませんが、本日はここまでとさせて下さい。
明日は、M&A仲介サイトがどうあるべきか、私の意見をまとめてみたいと思います。
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